思ったこと『色鮮やかな死神』
先日、神楽坂にあります書店、『かもめブックス』さんで落語させていただきました。
バタバタしていて写真が一枚も残ってないのですが、
たくさんの物語や言葉がぎゅーっと圧縮されている本屋という世界での落語はそれはそれは楽しかったです。
改めて思うのですが、
物語の力ってすごいなと思います。
最近村上春樹の最新刊の『騎士団長殺し』を読みまして、プロログーグで絵描きの主人公が夢の中で肖像画を描こうとしますが、主人公はどうしても肖像画を描くことができません。目の前にいる男には顔がないのです、というシーンがあるのですが、
これの文章を読ん瞬間に、ポーンと自分の頭の中に顔のない男が登場しました。
顔のない男ってどういうことって人に説明も実写もできないのですが、僕の頭の中には顔のない男が文章を読んだ瞬間に登場していました。
落語に「死神」と言う演目があるのですが、序盤の死神が登場するシーン
「誰だおまえは?」
「おれか?おれは死神だ」
「あ、死神だ」
この一言でお客様の頭の中に死神がポーンと登場させる。
その瞬間がものすごく楽しいんです。
もちろん死神なんて見たことないし、存在するかもわからないし、それを絵に描いたり、ディテールを説明すればするほど陳腐になっていくのですが、
「あ、死神だ」
という一言でポーンと鮮やかに登場する死神。
物語の力や落語の力ってすごい。
その死神をより鮮やかに登場させられる技術が話芸なのかもしれません。
より色鮮やかな死神を登場させられるように話芸を磨きたいと思います。
色鮮やかな死神ってご利益ありそう。